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87歳、炎の陶芸家 田中佐次郎氏 渾身の新作展「縄文から未来へ」
会期 2024年10月17日(木)~10月23日(水)
日本ギャラリーでは、唐津焼の名陶工・田中佐次郎氏による展覧会「縄文から未来へ ― 田中佐次郎展」を2024年10月17日から23日まで開催いたします。87歳を迎えた今もなお、田中氏は標高700メートルの山奥にある山瀬窯で、窯焚きに向き合い続けています。彼にとって窯焚きは、ただの制作過程ではなく、自然と対峙する神聖な儀式であり、己との戦いでもあります。炎の中で生まれる偶然性と、自然への畏敬の念が作品に宿り、見る者を圧倒する美しさを放っています。
田中氏は、陶芸家・加藤唐九郎氏や茶陶研究家・林屋晴三氏との出会いを通じて、伝統の枠を超え、自由で躍動感あふれる独自の作風を確立してきました。その作品は、まるで田中氏自身の生き様を映し出すかのように、燃え盛る情熱と自然の摂理に身を委ねる謙虚さが見事に融合しています。彼の作品からは、自然の力と人間の情熱が織り成す生命の躍動を感じ取ることができます。田中氏は、これまでに1,000回以上の窯焚きを行い、その過程で独自の哲学と美学を育んできました。3日間にわたる1300℃の炎との対話である窯焚きは、まさに魂の儀式ともいえるものです。偶然性が生み出す釉薬の美しさと、炎の力で生まれる独特の質感が、田中氏の作品には息づいており、そこには自然と人間が一体となった美が宿っています。
本展では、田中氏のこれまでの技術と精神が凝縮された新作が多数展示されます。山瀬窯で自ら掘り起こした粘土を使い、柔らかく繊細な手触りと独自の色合いを持つ作品を手がけた田中氏は、静けさと力強さ、偶然と制御が絶妙にバランスした作品を生み出してきました。展示される茶碗、花器、宝塔などの新作は、古唐津の伝統を継承しながらも現代的な感性が融合したものであり、田中氏の追求する「陶禅一如」の境地を体現しています。これらの作品は、過去から未来へと続く時間の流れを感じさせ、訪れる者に強い感動を与えることでしょう。
田中氏の作品は単なるやきものではありません。彼の作品には、炎と向き合い、命を懸けて生み出された自然の力と人間の情熱が凝縮されています。この展覧会を通じて、彼の作品とその背後にある人生そのものに触れ、未来へのメッセージを感じ取っていただけることでしょう。
ぜひこの機会に、炎と共に歩み続ける田中佐次郎氏の情熱と、その作品が描く未来へのメッセージをご覧ください。田中佐次郎氏の情熱と創造の世界に触れる貴重な機会を、お見逃しなく。
田中佐次郎(たなか・さじろう)
1937年、福岡県北九州市に生まれる。1960年より鎌倉円覚寺で参禅を開始。1965年には縄文・弥生土器の発掘調査に携わり、手びねりや野焼きを始める。参禅中に茶道、華道、南画、漢詩に傾倒。1975年には福井県永平寺で在家得度し、「陶禅一如」の交案を授かる。同年、唐津半田に登り窯を築窯。その後、古窯地山瀬に登り窯を築き、現在に至る。1979年、加藤唐九郎氏との禅談を通じて薫陶を受ける。1997年には韓国各地で古窯地の発掘後、蔚山に亀山窯を築窯。2007年より美術評論家で茶師の林屋清三氏との交流により「茶禅一味」の作風を確立。2023年にはNHK「宗教の時間」に出演し、「陶禅一如」について語る。1980年以降、渋谷黒田陶苑や日本橋三越、福岡三越をはじめとする全国各地で個展を開催し、また、ソウル、ジュネーブ、ニューヨークなど海外でも個展を開催している。