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【エッセイ】サミュエル・モールスの家を訪ねて~ Locust Grove Estate(著者:日本クラブ事務所長 前田正明 )

03/02/22

  • ローカスト・グローブ・エステート(Locust Grove Estate)


    ニューヨークの我が家(Briarcliff Manor, NY)から北に車で一時間ほどの所に、モールス符号の発明者として余りにも有名な、サミュエル・モールスが住んだLocust GroveというMansion(豪邸)があります。ゆったりと流れるハドソン川を見下ろす素晴らしい立地に40室の建屋と庭園、そして農園があります。彼はここに1851年に移り住み、亡くなる1872年までの約20年間を家族と共に過ごしました。今は史跡として博物館となり一般に公開されています。

     

    モールス符号(信号)とは?


    トン(短点)とツー(長点)の組み合わせで文字を表現するものです。子供の頃ボーイスカウトで習った、あるいはアマチュア無線の免許を取得する際に勉強された方も多いでしょう。元はアルファベットを表現したものですが、日本ではあいうえおを表す和文も用いられています。日本の電報はこの和文のモールス信号を使って伝送されました。これも電話が普及する前に一般的な通信手段として幅広く用いられたのです。

     

    サミュエル・モールスについて

     

    サミュエル・フィンリー・ブリース・モールス(Samuel Finley Breese Morse、1791年4月27日 – 1872年4月2日)はアメリカの画家であり、発明家です。モールス電信機を発明し、モールス符号にその名を残しました。一方、画家としても大変高名で、たくさんの作品が残されています。モールスはマサチューセッツ州チャールズタウン市(現ボストン市)生まれ。父はイギリス移民の牧師で、「アメリカ地理学の父」と称されるジュディディア・モールス(1761 – 1826)、母はアン・フィンリー・ブリース(1766 – 1828)です。父はカルヴァン主義の有名な伝道師でした。マサチューセッツ州アンドーヴァーのフィリップス・アカデミーで学び、イェール大学に進学して宗教哲学や数学を学びます。また、イェール大学在学中にベンジャミン・シリマンやジェレマイア・デイの電気についての講義を受けています。絵画の才能を発揮し、それで身を立てるようになりました。1810年にイェール大学を卒業しました。現在も彼の業績を称えてイエール大学は14あるカレッジの1つにモールスの名を冠しています。

     

    画家としてのサミュエル・モールス

    Locust Groveにも10点以上の作品が飾られていますが、モールスは多くの秀作を残しました。最初は3年間英国で絵画の修業をしていました。代表作の「Dying Hercules (1812)」は米英戦争が勃発したころの作品ですが、この絵はイギリスと連邦党への政治的声明と受け取られることもありました。その他英国でのもう1つの傑作は、19世紀初期のアメリカの絵画は宗教的テーマを扱ったものが多く、「 Judgment of Jupiter 」もその一つと言われています。モールスの宗教的信念を表すと同時に反連邦主義者への支持を表明した作品とされます。「ジョン・アダムズの肖像画」(1816年)は、連邦党所属の元大統領ジョン・アダムズ(第二代)の肖像画を描きました。1925年、ニューヨークにナショナル・アカデミー・オブ・デザインを設立、初代所長を務めました(1826年 – 1842年)。また、ニューヨーク大学の美術教授も務めました。

    Dying Hercules (1812)

     

    サミュエル・モールスの家
    この家は1771年に最初に建設されましたが、モールスが購入したのは1847年です。展示の解説によると1840年にモールスの特許が成立すると彼は非常に裕福になり、その結果最初に購入したのが、このLocust Groveだそうです。その後1851年にイタリア風のヴィラに改造されました。彼はこの邸宅をサマーハウスとして利用し、冬はNY市内のマンハッタンに住みました。マンハッタンからのメトロノース鉄道は現在は通勤が主な用途ですが、当時は郊外のサマーハウスとマンハッタンを結ぶ交通機関でした。1872年にモールスが亡くなった後、彼の家族は最終的にはこの邸宅を明け渡して転居しました。その後の入居者の1人であるウィリアム・ヤングは1895年にこの邸宅に移り、1901年にモールスの相続財産を購入しました。彼と彼の妻のマルタは歴史的な重要性を認識して、マンションと庭園を復元し新しいダイニングルームとゲストルームを追加しました。二人の集めた物品は現存の装飾芸術のコレクションの基礎となったもので、現在はマンションの各室に展示されています。現在、Locust Groveはガイド付きツアー、講演会などのイベントを提供しています。19世紀に使われていた5マイルの道も森の中に復元され、邸宅の外観とともにモールスが在住していた当時をしのぶことができます。

     

    マンション見学ツアー
    地元のボランティアによる解説の90分の見学ツアーに参加しました。写真撮影禁止・物品へのコンタクト禁止で手すりのみを触ってよいという厳格なルールでした。「ドアも触ってはいけないとは珍しいツアーね。」と同行した妻も申しておりました。モールスの時代に使われていたことがはっきりしているのは1Fの彼の書斎と奥の本棚などがある小部屋の二つです。この史跡は18-19世紀のアメリカの日常生活を知るには良いところで、当時の生活そのものが冷凍されて残っていると言えるでしょう。客間・ダイニングなどには大きな窓があって、ハドソン川が良く見えます。今回の訪問は12月で少し寂しい光景でしたが、春から秋までは緑豊かな素晴らしい景観を楽しめることでしょう。

     

    モールスギャラリー
    モールスの絵画と初期の電信機・電鍵などが展示されたモールスギャラリーが、ビジターセンターに併設されています。電信関係で主なものをご紹介しましょう。

     

    ● MorseのTelegraph Patent Model (1835)

    電磁石を用いた最初の実用的な電信機の開発であり、ニューヨーク大学で500mの電線を張り、短点と長点の組み合わせによるモールス信号と呼ばれる電文伝送を公開実験したもの。電信機の構造は、電磁石を用いて鉄片を引き、その運動を介して時計仕掛けのゼンマイの力で紙を送る機構を用いており、 巻紙の上に鉄片に連動するインクペンでしるしをつけるものであった。この特許出願の際に提出されたモールスの最初の電信機はスミソニア協会の国立アメリカ歴史博物館(ワシントンDC)が所蔵していて、ここのものはレプリカです。

     

    ● Telegraph Register (1850)

    モールスの発明から15年経ったころの改良されたデザイン。電磁石につけたペンが動くロール紙に受信したドットとダッシュを描画する構造は変わらない。

     

    ● Telegraphのライバルたち

    フランスや英国で開発されていたモールスの発明のライバルたちの展示があります。

     

    ● モールス符号関連の子供向けおもちゃやゲーム

    ウエスタンユニオンなどの電信運用会社が、自分たちのブランドを積極的にゲームなどに供給していました。当時はモールス符号が人々の間でトレンドだったのですね。

     

    4つの才能
    スーベニアショップに置かれていた「アメリカのレオナルド(・ダビンチ)」という題のモールスの伝記は、ピュリツアー賞受賞者のCarlrton Mabeeによるものでしたが、その序文には「モールスは一生で(1)画家(2)発明家(3)事業家(4)政治家の四つのキャリアを生きた人物である」とありました。「天は二物を与えず」と言いますが、正に彼は4つの才能を与えられた稀有な人物であったと言えましょう。

    機会がありましたら、ぜひモールスがこよなく愛したであろうハドソン川を見下ろす光景や、マンションの内部を鑑賞して頂いた後、モールス符号関連の展示物をギャラリーにてご覧ください。また、モールス関係の史跡としてはLocust Groveの他に、マンハッタンのセントラルパークに彼の銅像が建てられています。このエントランスは彼にちなんで、「Inventor’s Gate」と命名され ています(Fifth Avenueと72nd Streetの交差点横です)。

    Inside Inventors’ Gate at 72nd Street and Fifth Avenue, stands a monument to the American inventor and artist Samuel F.B. Morse (1791–1872)

    https://www.centralparknyc.org/locations/samuel-f-b-morse

     

    Locust Grove Estate
    2683 South Road, Poughkeepsie, NY 12601
    Tel. 845-454-4500
    www.lgny.org

    <マンハッタンからのアクセス>
    Poughkeepsie は、マンハッタンのグランドセントラル駅からMetro-North Railroadの“Hudson Line” に乗車して、およそ2時間です。駅からは約3Kmですのでタクシーをご利用ください。

     

    *本稿はCQ出版社発行の「CQ Ham Radio」誌(2019年2月号)に掲載されたものを、日本クラブ「Club News」ニュースレター用に編集したものです。

    *本稿の英語バージョンはJCCI “The Chamber’s Official” ニュースレター2021年10月号と11月号に掲載されています。

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